僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


 姉ちゃんの絵は、弟さんの葬式をした日からちょうど二週間くらいが経った頃に完成した。俺は絵ができると、それを紫月さんと一緒に、姉ちゃんのいる刑務所まで持って行った。

 姉ちゃんの面会に母さんが定期的に言っていたから、刑務所の場所は母さんに聞いたらすぐに教えてもらえた。

「蓮夜、本当にお母さんを呼ばなくて大丈夫か?」
 シートベルトを外している俺を見て、そう紫月さんは言った。
 刑務所の場所を聞いた時に、母さんが、『私も一緒に、面会に行く』って言ってくれたのに、俺がそれを断ったから、聞いているのだと思う。
「うん、大丈夫だよ。今は朝だから、母さんは家で寝ていると思うし」
 今は朝の八時だから、母さんが寝ている時間なのは本当だ。
「気を遣っているだけなら、今からでも呼んだ方がいい。お母さんも、その方が安心すると思うぞ」
「気を遣っているだけじゃないよ」
「え、ならどうして」
「母さんは俺の味方になってくれているけど、姉ちゃんのことも好きだから。そのせいで母さんがもしも面会の時に姉ちゃんのことを庇ったら、俺、すごく傷つくと思うから」
「ごめん、察しが悪かった」
 両手を合わせて、申し訳なさそうに紫月さんは頭を下げた。

「う、ううん。大丈夫。早く面会行こう、お義父さん」
「ああ、そうだな」
 紫月さんは俺の肩に手を置いてから、シートベルトを外して、運転手席のドアを開けた。
 紫月さんが降りたのを見てから、俺は助手席のドアを開けて、車を降りた。
 警察に誘導されて、俺と紫月さんは面会室に行った。

 面会室の中央には、レストランやカフェにあるカウンターテーブルを短くして、灰色に塗ったような感じのテーブルが置かれていた。その上にはガラスが貼ってあって、それが狭い部屋を、無理に二つに分けていた。ガラスの先にあるパイプ椅子の上に、姉ちゃんは足を組んで座っていた。
  姉ちゃんのそばには、女性の警察がいた。

「久しぶりじゃない、蓮夜」
 姉ちゃんは久しぶりに、俺のことを名前で呼んだ。たぶんそう呼んだことに大した意味はない。

 ガラスの前にはパイプ椅子が二つ置かれていた。でも俺は怖くて、姉ちゃんと向き合って座ることができなかった。

「よう、飾音」
「お久しぶりです、お兄さん。足の具合はどうですか?」
 自分が怪我をさせたのに聞くのかよ? 姉ちゃんは完全に、紫月さんに喧嘩を売っていた。

「おかげさまでもうすっかり治った」
「あら、それは残念」
 いや全然残念じゃないだろ! 俺は心の中で、勢いよく突っ込んだ。