僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


「成長したな、義勇。もう、大丈夫そうだな」
 紫月さんの頭を撫でて、大地さんは言った。

 大丈夫?

「はい。俺はもう、自己犠牲は二度としないです」

「ならもう、俺の役目は終わりだな。蓮くんの墓ができたら、俺はもう必要最低限しか、ここに来ないことにする」

「え」
 紫月さんは目を見開いて、大地さんを見た。紫月さんは大地さんの服の裾を掴もうとしたが、服と手が触れ合った瞬間に、手を降ろした。

「寂しそうな顔をするなよ。もう俺がいなくたって大丈夫だろ。蓮夜くんがいるんだから」

 紫月さんの服の裾を掴んで、俺は紫月さんの顔を覗き込んだ。俺と目が合うと、紫月さんは何も言わずに、俺の身体を抱きしめた。

「蓮夜くん、義勇をよろしく」
 紫月さんが抱擁をやめたのを見てから、大地さんは俺に声をかけた。
「は、はい!」
 俺が大きな声で返事をすると、大地さんは嬉しそうに歯を出して笑った。

「はは、いい返事だ。それじゃあな」
 大地さんが玄関に行く。紫月さんは走って玄関に行った。俺は慌てて、紫月さんの後を追った。

「ま、待って、大地さ……お義父さん! 今まで、ありがとう」
 大地さんは目を見開いて、紫月さんを見た。

「義勇、俺にお礼なんて言っていいのか。蓮くんが死んだのは、俺がお前と蓮くんと昔、まともに向き合わなかったせいでもあるのに」

「それでも俺は、お義父さんがいなかったら自殺していたから。本当にありがとう、お義父さん」

「ずっと元気でいろよ、義勇」
「はい」
 紫月さんが頷いたのを確認すると、大地さんはドアを開けて、マンションから去って行った。