僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


「ずるい? 何処がずるいって言うんだ?」

「そういうところがです! 駐車場なのに、ちゃっかりバラの花束は用意してくれていて、涙も拭ってくれて。私が不機嫌になったら、すぐに気を利かせて家にあげようとしたり、ご飯を奢ろうとしたりしてくれて。今だって、花束を車に置こうともしないで、きちんと持ってくれていて。店長がそんな風だから、私は出会った時からずっと、片思いを拗らせているんですよ!!」

 叫ぶかのように、大きな声で鈴香さんは言った。
 紫月さんの顔が真っ赤になった。葬式が終わったこともあって、駐車場に人が集まり始めた。

「ばっ、馬鹿お前、こんなところで何言ってるんだ!」

「駐車場でプロポーズした人に言われたくないです!」
 大声で言った紫月さんに、鈴香さんは負けずに叫び返した。
 確かにそうだな。

 紫月さんは何も言わずに、口を閉じてしまった。多分、言い返し方が思いつかなかったのだと思う。

 花束を受け取ると、鈴香さんは紫月さんの唇に、自分の唇をくっつけた。

「よろしくお願いします、義勇さん」
 唇を離すと、笑って鈴香さんは言った。
「あ、ああ。よろしく」
 紫月さんの顔は、茹でたタコみたいに真っ赤に染まっていた。多分、鈴香さんの不意の行動に戸惑ったのだと思う。

「お義父さん、一本取られたね」

「う、うるさい!」
 紫月さんは感情をぶつけるかのように、車の後ろのドアを勢いよく閉めた。