僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


「私、店長の惚気聞くために呼ばれたんですか?」
「いや違う。鈴香、ちょっとこっち来てくれるか」
「はい」
 紫月さんは鈴香さんの手を引いて、葬式場のそばにあった駐車場に行った。
 紫月さんはセダンの車のそばに行くと、車の後ろのドアを開けて、何かを取った。
 何か気になって、俺は小走りで紫月さんの隣に行った。

 紫月さんは、真っ赤な薔薇の花束を持っていた。紫月さんが葬式の前に、花屋で買ったやつだ。買った時に誰に渡すのか教えてくれなかったのは、こういうことをするつもりだったからみたいだ。
「えっ」
 俺達のそばに来ると、鈴香さんは信じられないとでも言うかのように、口を手で覆った。

「……鈴香、俺と、結婚してください」
 鈴香さんに花束を差し出して、紫月さんは深く頭を下げた。

「え、嘘……じゃないですよね?」
 花束と紫月さんを交互に見ながら、鈴香さんは細い声で言った。鈴香さんの瞳から、涙が零れている。

「俺がこんな嘘を言う奴じゃないのは、お前が一番よく知っているだろ」
 顔を上げて、紫月さんは返事をした。
「え、わ、私でいいんですか?」
 鈴香さんの顔はりんごのように真っ赤に染まっていた。

「お前がいいんだ。お前以外、考えられない」
「え、本当ですか?」
「ああ、本当だ。……俺はお前と一緒に、蓮夜を育てたい」

「馬鹿。店長は大馬鹿です」
「誰が馬鹿だって?」
 紫月さんが顔を顰める。

「駐車場でプロポーズをするのなんて、店長くらいですよ。ムードがなさすぎです」
「ムードがなくて悪かったな」
「本当ですよ。店長はずるい。ずるすぎます」
 紫月さんは頬を触って、鈴香さんの涙を拭った。