僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


「ああ。はあ。蓮夜、英輔、飯でも食いに行くか?」
「義勇さんの奢りですか?」
 俺より先に、英輔が食いついた。お腹空いていたのか?
「ああ、奢ってやるよ。でも飯の場所を決めるのはお前じゃなくて蓮夜な」
「え、俺が決めていいの?」
「ああ。むしろ蓮夜が決めてくれないと困る。俺を助けてくれた蓮夜にご馳走を食べさせたいから、ご飯に行こうって言っているんだからな」

「そ、それなら焼肉行きたい」
「蓮夜、もしかして焼肉ライキのこと言ってる?」
「うん」
「じゃあそこより美味い焼肉の店に行こう。あそこは安物だから」

「え、いいよ、そんなことしなくて」
「俺がお前に美味いものを食わせたいんだよ!」

 その後、紫月さんは本当に俺と英輔に焼肉をご馳走してくれた。しかもただの焼肉のお店じゃなくて、食べ放題のお店だった!

 お会計が終わると、俺と紫月さんと英輔はすぐに店を出た。

「はあ。これからは節約しないとなあ。蓮夜と死ぬまで一緒に暮らすんだし」
 車が停められている駐車場に向かって足を進めながら、紫月さんは言った。

「俺が、節約をする理由になるの?」
「は? なるに決まっているだろ。当たり前のことを聞くな」
 怒るみたいに、紫月さんは声を荒げた。
「え」
「はあ。蓮夜、養子になるってことは、もう滅多に家に戻らないってことだからな。そうなると勉強机やイーゼルやキャンバスを買い直して、部屋に持ってこないといけないだろ?」
 ああ、そういうことなのか。
「別に買い直さなくていいよ?」
「いや、買い直す。額縁も買わないとだから、そのついでに買い直す」

 駐車場につくと、紫月さんはそこの端に停めてあった車のロックをすぐに解除した。

「え、それって……」
「ああ。蓮夜が描いた絵を、額縁に入れて飾ろうと思って」
 紫月さんは早歩きで車のそばに行って、後部座席のドアを開けた。

「飾ってくれるの?」
 嬉しすぎて、嘘だったらどうしようと不安になって、つい聞いてしまった。
「ああ、飾るよ」
「何で」
「すごく良い絵だから。蓮夜は天才だ。本当に才能があると思う。初めて絵を見た時はすごく戸惑ったけど、今改めて見ると、この絵はとても想像で描ける絵じゃない気がするし、俺の両親もすごく似ているし、本当に良い絵だと思う」
 後部座席の背もたれの前に置かれているキャンバスを眺めながら、紫月さんは笑った。