「あ。こいつ、ガチ泣きしてんじゃん。いじめ甲斐があるな」
秋は俺のネクタイを軽々と解くと、それを口にくわえた。汚い。
ワイシャツのボタンを全部外されて、左右の袖を引っ張られてシャツを脱がされた。
シャツの下に着ているインナーも脱がされて、無理矢理上裸にさせられる。
何で服を脱がされなきゃなんないんだよ。傷は誰にも見られたくないのに。
何で服を脱がされなきゃなんないんだよ。
傷は誰にも見られたくないのに。
「うわっ、汚ねぇ」
秋は俺の身体を見ると、嫌そうに舌を出した。
虐待のせいでできた青黒い痣や切り傷が無数にある俺の身体が気持ち悪いんだ。
「見れたもんじゃないわね」
「おいおい、そんな身体にした当の本人が言う言葉かよ」
秋はネクタイを振り回しながら声を上げて、姉ちゃんにツッコミを入れた。
「うるさいわよ。さっさとコイツの腕縛って」
「へいへい」
秋は再びネクタイを口にくわえると、俺の左腕を掴んで、背中の後ろにやった。そのまま左腕を右腕のそばに持ってかれ、両手の指を後ろ手で組まされる。
後ろ手で組まされているのが相当きつくて、指が悲鳴を上げた。
指の骨が折れるのと同じくらい痛いんじゃないかと、折れたこともないくせに思った。
「――っ!!」
ぬめぬめとしたものが、手首の上に落ちた。
これ、秋の唾で湿ったネクタイだ。こいつ、このためにネクタイを口にくわえたのか。かなり悪趣味だな。
ネクタイで手首を縛られた。手首はきつく縛られたせいで、ものすごい痛みを訴えた。どうやら二重以上回してから縛ったらしい。
腕が完全に動かせなくなった。
……この状況、完全に詰んでるな。
姉ちゃんは俺の鞄の中から水筒を取り出すと、中に入っていた麦茶を俺の顔にぶっかけた。
冷たい。
世界史や日本史などの分厚い教科書で頭を何度も狂ったように叩かれる。
身体中を蹴られたり叩かれたりしたせいか徐々に意識がもうろうとしてきて、目の焦点が合わなくなった。
「そろそろ勘弁してやるかぁ」
「何言ってるの。まだよ」
そう言うと、姉ちゃんは俺の制服のズボンを摺り下ろして、それで、俺の両足首を縛り上げた。
……寒。
流石にこんな格好じゃ、夏でも寒い。
それに何より、恥ずかしい。
「これでおしまい。秋、車持ってきて。こいつ運ぶわよ」
身体中に押し寄せる痛みと熱と電気に耐えられなくなった俺は、その言葉を聞いた直後、気を失った。



