それから俺は、英輔と一緒に夢中で絵を描いた。絵が完成したのは、俺が下書きを終えてから一週間後のことだった。その時には紫月さんの足の怪我はもう一人で歩いても支障がないくらいにまで治っていた。俺の指の骨折も、ちゃんと治った。
弟さんの葬式は紫月さんが絶対に出席しないとだから、明日行われることになった。葬式は家族葬だから俺は出席できないけど、会場までは一緒に行っていいみたいだ。
今日は久しぶりに、紫月さんが学校まで俺を迎えに来てくれる日だ。紫月さんが今日から仕事を再開したから、学校までは送ってもらえなかったけど、迎えには来てくれることになったんだ。
美術室で英輔と一緒に紫月さんを待っていたら、突然ポケットに入っていたスマフォが音を立てた。
紫月さんからラインで、『着いた』とメッセージがきていた。俺がスマフォを見ても、教卓のそばにいた矢野先生は何も言わなかった。たぶん、部活がもう終わっていたから、注意をされなかったのだと思う。
俺は矢野先生に挨拶をしてから、キャンバスを抱えて駐車場に行った。英輔は「運動部だから」と言って、俺の鞄と自分の鞄を抱えて俺についてきてくれた。
駐車場に着くと、俺はすぐに紫月さんを探した。紫月さんは駐車場の隅で、セダンの車に寄りかかって、空を見上げていた。煙草は吸っていない。どうやらちゃんと、禁煙をしてくれているようだ。
「お帰り、蓮夜。よ、英輔!」
紫月さんが近づいてくる。
「こんにちは!」
「英輔、鞄車に入れるぞ」
「ありがとうございます!」
紫月さんは英輔から鞄を取ると、それをすぐに車の後部座席の後ろに入れた。
「蓮夜、絵、できたのか?」
俺を見て、紫月さんは首を傾げた。
「う、うん。お義父さんに見て欲しくて、持ってきたんだ」
喜んで貰えるのだろうか。紫月さんがこの絵を見ても元気にならなかったらどうしよう。不安になって、身体が震えた。
英輔がキャンバスの右側を後ろから掴んで、俺に笑いかける。俺は深呼吸をしてから、キャンバスの左側を後ろから掴んで、紫月さんに絵を見せた。



