僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


 「蓮夜!」
 グラウンドの出入り口のそばにいたら、英輔が俺に気づいて、手を振ってきた。英輔が走って、俺に近づいてくる。

「え、英輔、部活は?」
「さっきまで練習試合やってたから、今は休憩。蓮夜こそ部活どうしたんだよ。さぼり?」
「絵のアイディアが思い浮かばなくて頭を抱えてたら、先生に外の空気吸ってきたらって言われて」

「ああ、義勇さんを元気にする絵のアイディア?」
「うん。お義父さんの弟さんの絵を描いてみようと思ったんだけど、俺は病気の弟さんしか知らないから、良いのが浮かんでこなくて」
「んー、それなら義勇さんの絵をとりあえず描いてみれば? それを修正して、弟さんに似せたらいいじゃん」
 確かに、それならできそうな気がする。

「そっか、ありがとう、英輔! 俺、お義父さんの絵描いてみる!」
「はは、立ち直んの早すぎ」
「え、そう?」
「そうだよ。義勇さんのこと好きすぎ」
 恥ずかしくて、顔が真っ赤になったような気がした。
「あはは、顔赤。じゃ、俺そろそろ戻るから、また後でな」

「うん、ありがとう!」
 そう言うと、俺はすぐに英輔とわかれて、美術室に戻った。

 さっきまで使っていた席に行って、スケッチブックを机の上に置いてから、椅子に座って目を閉じる。

 俺によくないところがあると俺を叱って、いいところがあると、「蓮夜はいい子だな」と言って頭を撫でてくれる紫月さん。頭を撫でられること自体は姉ちゃんにも母さんにもされたことがあるけれど、俺が撫でられた時にとても嬉しく感じるのは紫月さんだけで。母さんに頭を撫でられた時も嬉しいとは感じるのだけれど、紫月さんに撫でられると母さんの倍以上嬉しくて。いつも優しくて、俺に怒る時は俺のことを考えて一生懸命何がよくないかを終えてくれて、俺の母さんや姉ちゃんに怒る時は俺のために、冷酷に怒ってくれる紫月さん。俺はそんな紫月さんが誰よりも大切だ。紫月さんの世界は弟が中心だけれど、俺の世界は紫月さんが中心だ。

 紫月さんのことを想像してみたら、すぐに手が動いた。俺はそのまま、シャーペンを想いのままに動かした。