僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


「蓮夜、部活行こう!」
 英輔が教室に入ってきて、俺に声をかける。
「うん」
 俺は鞄を手に取ると、笑って英輔の元に行った。

「蓮夜は目を瞑ってなら絵を描けるようになったんだっけ?」
 二人で教室を出たところで、英輔は言った。

「うん」

「でも、部活中に目なんて瞑っていたら、不審がられるよな」
「うん。だから今日も、絵は提出できないかも」
 そんなことしたら物凄く怒られる気がするけど。

「じゃあ黒板側じゃなくて、壁側向いてやれば? それか昨日みたいに窓際に座るなら、窓の方を向いて描くとか?」

「それ、いいかも」
「お、マジ? じゃあそうしろよ!」
「うん。そうしてみる」
 笑って俺は頷いた。

「じゃ、俺グラウンド行くから、また後で!」
 美術室の前に着くと、英輔は笑って俺の背中を叩いた。
 後で? 部活が終わったら、昨日みたいに一緒に帰っていいのだろうか?

「え。う、うん!」
 戸惑いながら俺は頷いた。俺が頷くと、英輔はすぐにグラウンドに向かった。

 ……そっか。友達だから、一緒にお昼も食べていいし、一緒に帰ってもいいんだ。クラスが同じなら体育の授業をする時は一緒にグラウンドや体育館に向かっていいし、休み時間は教室で飽きるまで話をしていいんだ。友達って確か、そういうものだ。一緒にいることにいちいち許可なんていらないんだ。友達を作ってなさすぎて、そのことをすっかり忘れていた。
 心が満たされて、涙腺が緩みそうになった。俺、英輔とずっと友達でいていいのかな。ずっと友達でいたいな。

「蓮夜! 絵は出来たか?」
 美術室のドアを開けたら、教卓の前にいた矢野先生が声をかけてきた。

「い、一応」

 鞄からスケッチブックを取り出して、矢野先生に縄の絵を見せる。

「すごいじゃないか! さすが、『神の手を持つ子供』ともてはやされただけのことはあるな!」
 それは、小学生の俺が賞を取ったことを搭載した新聞や雑誌に書かれたキャッチコピーだ。

「やめてください。もう俺は、そんなことを言われるほど上手くないので」
 四年も絵を描いていなかったのに、そんなことを言われても困る。

「そうか? 十分上手く描けていると思うけどな」
「描けてないです。後その褒め言葉を言われても今は嬉しくないので、言わないでください」