僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい

 
 迷わず頷く。

「うん。……英輔、お義父さんを元気にすること手伝ってくれる?」

「もちろん、俺にできることなら何だってする。でも、具体的には何をすれば?」
「俺、紫月さんを元気にする絵を描きたくて。それを手伝って欲しい」
「俺、絵なんて描けないぞ?」
「絵は、俺が描くから。色塗りを手伝って欲しくて。目を瞑っていたら、色を塗っても枠線からはみ出ちゃうと思うから」
「おっけー、手伝う! あ、でも……ごめん、俺、正直言うと、義勇さんと蓮夜に同情してて。俺の家は父さんも母さんも優しいから。それでも、手伝っていいか?」

 英輔の喉元から、細い声が漏れた。

「うん、もちろんいいよ。ありがとう、ちゃんと伝えてくれて。何も言われてないで同情されるよりは、その方がずっといい」
「本当か?」
「本当だよ。ありがとう、英輔」
 そう言って、俺は思いっきり口を開けて笑った。

「よ、よかったぁ。伝えるの怖かったから、マジで安心した!」

 頬を赤らめて、屈託もなく、英輔は笑った。爽やかで、頬が引き攣っていない自然な笑みだ。
 虐待をされていなかったら、俺も英輔みたいにこんな顔で笑ったり、誰とでも仲良くなったりできるようになっていたのだろうか。今更そんなことを想像しても意味ないか。悲しくなって、俺は下を向いた。

「安心したならよかった」

「よくない」

「え?」

「蓮夜が落ち込んでいるから。ごめん、俺、何か余計なこと言った?」
「いやそんなことないよ。俺はただ、英輔が羨ましいなと思って」
「そうなんだな。ごめん、俺、義勇さんみたいに蓮夜の気持ちを察すること全然できなくて。話しにくいよな」
「そんなことないよ。俺は英輔が友達になってくれたおかげで、学校に行くのがすごく楽しみになったから」
「マジで? よかった!」
 安心するかのように、英輔はほっと息を吐いた。