蓮夜が目を開ける。たぶん、俺の戸惑いを不思議に思ったから、開けたのだと思う。
「お義父さん?」
「蓮夜、これは……」
「あっ! ご、ごめんなさい」
蓮夜が慌てた様子で、俺に謝罪をする。別に謝って欲しいわけじゃない。俺はただ、何でこの絵なのか知りたいだけだ。俺と弟のことを気がかりに思っていたから描いたのだろうか。
「蓮夜、俺が夜中泣いていたことに」
「ごめんなさい。お義父さんが泣いていることにはずっと気づいていた。それで、その……お義父さんのために、何かできないかと思って……俺、縄のことを調べようとして」
「それでこの絵を描いたのか」
「う、うん」
蓮夜の顔がどんどん青ざめていく。図星なのか。
別に心配をかけている自覚がなかったわけじゃない。ただ、言えなかっただけだ。俺が一緒にいるのに相談をしてくれなかったから、蓮夜は自分なりにどうするべきか考えて、縄のことを調べようときめたのだろう。俺が相談をしてくれるのを待つだけにはならなかったのか。蓮夜に貪欲であってくれと、俺は言った。蓮夜がその望み通りに受け身じゃなくなってくれて、自分で選択をしたのは喜ぶべきことだ。そうなってくれて本当によかったと思う。
「ごめんなさい」
「もう謝らなくていい、俺が話そうとしなかったから、色々考えてくれたんだろ」
「うん」
「ありがとう。相談しなくて本当に悪かった。ごめんな」
「ううん」
「蓮夜、縄のことは調べなくていいから。調べても、どうせ八年前じゃ何も犯罪の手掛かりなんて出ないだろうから」
手がかりが出ない確信もないくせに、俺は言った。
「お義父さんは本当に、それでいいの?」
「ああ、いいよ」
口角を上げて、俺は言った。
「そんな顔で、『いいよ』なんて言わないでよ」
「え?」
「作り笑顔……しないで。英輔の前では笑わなくていい。でも、俺の前でもお義父さんが心の底から笑ってくれないのは嫌だ」
蓮夜は俺の腕を掴んで、涙を流しながら懇願した。幼い子供に我儘を言われているような気がした。子供にこんな我儘を言わせてしまった自分に嫌気がさした。もっと早く頼ればよかった。そうすればきっと、泣かせることもなかったのに。
「ごめん。そうだよな」
蓮夜の涙を拭って頷く。もう独りで泣くことはやめよう。そうすることで、蓮夜が少しでも泣かなくなるなら。
「俺、縄のこと調べるよ、お義父さんのために」
「ごめん、ありがとう」
蓮夜の胸に顔を埋めて、俺は掠れた声を出した。



