僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


 壁に手を当てて足を引き摺りながら、紫月さんはリビングに向かう。俺はすぐに紫月さんの腕と脇の間に入って、身体を支えた。

「お義父さん、無理しないでよ」
「あはは。悪い。蓮夜の友達の前で肩を借りるのはよくないかと思って」
「怪我をしているんだから、我慢する方がダメだよ」
「あはは、ごめんな。ありがとう。英輔、飯は食っていっていいけど、手料理は勘弁してくれよ? 代わりに何でも、好きなものを頼め」

「ええ、すごく太っ腹ですね?」
「ああ。蓮夜が友達を連れてきたのなんて初めてだから、奮発しようと思って」
 紫月さんがそう言ってくれたのが嬉しくて、ついテンションが上がった。
「ありがとうございます!」
 英輔の返事がデカすぎてうるさい。さすが運動部員と言ったところだろうか。本当に、どこもかしこも俺と正反対の友達ができたな。まあ、それはそれで楽しそうだからいいけど。

「蓮夜、美術部はどうだった?」
 紫月さんがリビングに入ってから、俺に目を向ける。
「……やっぱり、絵描けなかった」
 しまった。紫月さんに聞かれたからつい、本当のことを言ってしまった。俺の馬鹿。嘘を貫き通せなくなるだろうが。
 紫月さんはソファの上に腰を降ろした。
 俺は英輔と一緒に、紫月さんの隣に腰を下ろした。

「やっぱり?」
 英輔が俺の顔を覗き込む。
 どうしよう。なんて言えば、誤魔化せるのだろう。

「蓮夜、もう隠すのは諦めろ。元々お前、嘘つくのも誤魔化すのも下手なんだから」
 紫月さんの中で俺ってそういう認識なのか? 間違ってはいないけど、少ししショックだ。

「うう」
「まあ蓮夜はそういうところが、可愛いんだけどな」

「蓮夜、俺は聞いちゃダメか?」
 英輔が俺の肩を掴む。

「ダメってことはないけど。え? 英輔、俺が嘘ついていたことに気づいていたのか?」
「ああ。だって蓮夜、あの時すごく声小さかったし。それに、本当に構想を練っていたなら、それは部活をやってなかったことにはならないじゃん。それなのに先生が蓮夜に怒っていたのも変だと思ったから」
 行動が全部裏目に出ていた。最悪だ。返す言葉もない。