僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


「蓮夜、さっきのって?」
 二人で校門を出たところで、英輔が俺に話しかける。
「絵の構想を練るだけで時間になっちゃって」
「ああ、そういうことか」
「うん」
 ごめん、英輔。話し方や雰囲気でお前がいい奴なのはわかるけど、それが全てを話す理由にはならない。

「蓮夜、家どこ? 俺は立川」
「俺も」
「じゃあ送る」
「え、ありがとう!」
「おう!」
 英輔は本当に、紫月さんのいるマンションまで俺を送ってくれた。

 今日は紫月さんが病み上がりで、大地さんが弟さんのことで忙しいこともあって元から送り迎えがなかったから、英輔がそうしてくれたのはかなりありがたかった。

 鞄から鍵を取り出して、俺はドアを開けた。

「お帰り、蓮夜」
 紫月さんが玄関で俺を出迎えてくれた。

「え、お義父さん、もう大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫。心配かけて悪かったな。蓮夜、その子は?」

 紫月さんが俺の背後にいる英輔に目を向ける。

「こんにちは、英輔です」
「……友達。今日知り合って」

「そうか。初めましてだな、英輔。蓮夜の父親の義勇だ。蓮夜の友達になってくれてありがとな。飯食ってくか?」
 作り笑いをして、紫月さんは首を傾げる。紫月さんの瞳は、ほんのり赤くなっていた。やっぱり紫月さんの心は全然元気じゃない。

「え、いいんですか!」
「ああ。ただし、親にはちゃんと連絡しろよ?」

「うす! お邪魔します!」
 そう言うと、英輔はすぐに靴を脱いで、廊下に足を踏み入れた。びっくりするくらい遠慮がない。いいなぁ。俺もこれくらい素直になりたい。