「もったいねー。美術室ってグラウンドから一番近いから、運動部員モデルにし放題なのに」
モデルにし放題?
英輔の言葉に驚いて、俺は思わず窓からグラウンドを見た。グラウンドでは、サッカー部の他に、陸上部と、野球部が練習をしていた。そっか。グラウンドで練習をしている部活って、三つもあったのか。さっきはサッカー部のことしか見ていなかったから、気づかなかった。
「知らなかった。俺、今日美術部入ったから」
「そっか。じゃあ今度、俺をモデルにして描いてくれよ」
「う、うん。描いてみようかな」
作り笑いをして、俺は頷いた。
「完成したら見せろよ?」
「うん」
完成させられる日なんて、来るのだろうか。
「俺、そろそろ部活戻るわ。あんまりここに長くいると、先輩に怒られるし。蓮夜、部活何時くらいに終わる?」
「えっと、六時くらいだと思う」
「じゃあ俺もそれくらいに部活終わるから、一緒に帰ろう。片付けが済んだら、美術室に行くから」
「え、う、うん! 俺も、英輔と一緒に帰りたい」
誘われたのが嬉しくて、俺はついそんなことを口走った。
友達と帰るのなんて虐待をされる前以来だから、本当に、涙が出そうなくらい嬉しい。泣いたら驚かれると思ったから、泣くのは堪えたけど。
「あはは、素直かよ。じゃあ、また後で来るわ」
口を大きく開けて、英輔は笑った。
「うん」
俺が頷いたのを見ると、英輔はすぐにグラウンドに戻った。



