僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


 この考えは良くない。でも、確かにあり得る話だ。

「お金は奪われていたって言ってなかった?」
「ああ。だから弟は友達から無料でもらったらしい」

「新品じゃなかったの?」
「ああ、だからネットもついていなかった」

 その友達がネットのついたボールを弟さんに渡して、弟さんがネットを取ってから紫月さんに渡したのではないか? そして弟さんはあの日、持っていたネットを紐状に切って、それを使って紫月さんの両親を殺したのではないだろうか。俺はサッカーをしたことなんて学校の授業でしかないし、スポーツ用品店にも行ったことがないから、ネットに縄が使われているかどうかなんて知らない。でも、もしも縄に近い材質の紐があるなら、それを使って首を絞めることは、きっと可能だ。

 でもこの話は、紫月さんには絶対にしたらダメだ。俺が紫月さんに内緒でスポーツ用品店に行って、調べないとダメだ。それなら、一体どうやって? 紫月さんは俺が一人で外に出るのを許可してはくれないだろう。そしたら誰かと一緒に、スポーツ用品店に行くしかない。弟さんの葬儀のことで忙しい大地さんには頼めない。それなら、鈴香さんに頼むか? いや、ダメだ。鈴香さんは紫月さんと繋がっている。母さんも紫月さんとの仲は悪くないから、あんまり良くないかも。それなら俺が、運動部に入っている友達を作って、その子と一緒に行くしかない。

「……俺、美術部入ろうかな」

「本当か?」

「うん、入ってみる」

 運動部の友達を作るなら、俺も部活に入って、部活後に話しかけるのがいいだろう。今更友達なんて作れる気がしない。でも頑張ろう、紫月さんのために。紫月さんが元気になるためなら、俺はなんでもしたい。絵だって、描けるようになってみせる。