「蓮夜、あんまり俺のそばにいると、風邪がうつるぞ」
紫月さんに肩を貸して、二人で部屋の中央にあるテーブルのそばに行く。
「うつっていい」
「明日学校なのに?」
商品を袋から出しながら、紫月さんは聞く。袋には割り箸も二つ入っていた。俺は割り箸を引っ張って、二つに分けてから紫月さんの前に置いた。
「……友達いないし」
下を向いて呟く。虐待のせいでずっと友達を作れていなかったせいで、十分休みや昼休みは必然的に一人になってしまうから、学校は全然楽しくはない。あんまり休むと留年になるから、行かないといけないとは思うけど。
「蓮夜美術部、入ってみたらどうだ?」
商品の蓋を開けて、紫月さんはいう。
「描けないのに?」
ご飯を食べる気が失せてしまった。紫月さんの肩に自分の肩をくっつけてから、顔を上に上げる。俺と目が合うと、紫月さんはすぐに口を開いた。
「環境を変えれば、また描けるようになるかもしれないだろ。それに別に、描けないわけじゃないだろ。描く気になれないだけで」
「そうだけど」
「別にいいんだよ、今は描く気になれてなくても。サッカー部の奴は入部した時から全員サッカーが上手いわけでも、陸上部の奴は入部した時から全員足が速いわけでもないんだから」
確かにそうなのかもしれない。
「でも」
美術部は絵を描く部活だ。そんなところに、まだ描く気になれてないのに入っていいんだろうか。だってそんなの、サッカーを好きじゃないのにサッカー部に入るようなものじゃないか。
「大丈夫だよ。俺だって元々は、サッカーを本気でやる気なんかなかったし。むしろ帰宅部になるつもりだった」
「え。そうなの?」
「そうだよ。でも十二歳の誕生日に、弟からサッカーボールをもらって。それでサッカー部に入ることにした」
サッカーボール?
サッカーボールって、買う時にボールネットがついている物もあるよな。ボールネットって、縄のものもあるのだろうか。



