僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい




 俺と鈴香さんは飲み物を用意すると、すぐに憩いの場に行った。

「蓮夜、何か零したか? 飲み物用意するのにだいぶ時間かかっていたみたいだけど」

 ドアを開けた俺に、紫月さんが声をかける。

「ううん、零してないよ」
「二人で店長の話をしてたんですよ」

「まさか、俺が送っていたメールの話じゃないだろうな?」
「教えません」
 そう言って、鈴香さんはイタズラ好きの女の子みたいに、歯を出して笑った。

「お前絶対教えただろ!」
 紫月さんが鈴香さんを睨む。

「さあ、どうでしょう」
 鈴香さんは笑いながらはぐらかした。

「はあ。蓮夜、俺の部屋に湯河原で買った土産があるから取ってきて」
「うん」

 俺はすぐに、紫月さんの部屋にお土産を取りに行った。机の上に、温泉まんじゅうと書かれた箱が置いてあった。これのことか? 俺は箱を手に取ると、すぐに憩いの場に戻った。

「蓮夜それ、鈴香に渡して」
「え、うん。どうぞ」
 俺は鈴香さんに箱を渡した。温泉まんじゅうの文字を触りながら、鈴香さんは首を傾げた。
「何でですか、これ」
「蓮夜と湯河原行ったから、その土産。やるよ、お前に」
 鈴香さんが口を手で覆って、紫月さんを見る。
「え、私がもらっていいんですか」
「ああ。お前のために買ったから」
「え、いいんですか? 私、そんなこと言われたら期待しちゃいますよ」
 鈴香さんの頬は真紅の薔薇のように真っ赤に染まっていた。

「ただのお礼だから。大した意味はない」
「あげて落とさないでください」
 頬を膨らませて、鈴香さんは言った。
「はいはい」
 雑に返事をした紫月さんを見て、鈴香さんは嬉しそうに笑った。