僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


「お義父さん、鈴香さんに俺のこと話してたの?」

「はあ。交換条件だったんだよ。連夜や俺のことが心配だから、隠して欲しいなら、近況を教えてって言われたんだ」

 そういうことか。

「店長毎回私に十行くらいの長文のメール送ってきてね。しかもその内容が『今日も蓮夜に癒された』とか『今日もお義父さんって呼ばれた。可愛い』とかで。私はもう親ばかとメールをしている気分だよ」

 紫月さんを見る。紫月さんは手で顔を隠して、俺から目を背けていた。耳が赤くなっている。本当のことなのだろうか。意外すぎて、言葉が出てこなかった。嬉しい。紫月さんは他人にそんな話をするくらい俺のことを好いてくれているんだ。あれ、でも紫月さんって最近、元気なかったよな? それなのに鈴香さんに俺の話をしていたのか?

「お前は一旦口を閉じろ」
 紫月さんが鈴香さんを睨みつけた。
「はーい」
 ぺろりと舌を出してから、鈴香さんは口を閉じた。

「昨日も鈴香さんに俺のことを話したの?」
「いや昨日は送ってないな」
 やっぱり送っていないのか。

「鈴香さん、何か飲みますか?」
 落ち込んでしまいそうだったので、俺は無理に話を切り替えた。

「え、いいの? あ、でも私、自分でやるよ! 店長元気ないみたいだし、蓮夜くんも指、まだ治ってないでしょ?」

  包帯が巻かれている俺の指を、鈴香さんは見る。

「はい、まだ治ってはいないです。もう痛みには慣れましたけど」

「何でお前はその指でおじやなんて作ろうとしたんだよ。危なっかしいにも程がある」

 俺の手を触りながら、紫月さんは悲しそうに顔を伏せた。

「え、だってお義父さんが心配で」
「無理はしないようにしろよ」
「うん、してないよ」
 そう言って、俺は口角を上げた。
「ならいい」
 俺の指から手を離して、紫月さんは作り笑いをした。