僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


 不安になる。紫月さんが何を思ってあんな行動をとったのか確信できないから。俺が紫月さんの気持ちを全部理解できたらいいのに。義理の親子ではあっても所詮紫月さんの他人の俺には、それはとても無理なことなのだろうか。

 突然、インターホンが鳴った。

「嫌な予感がする」
 紫月さんを見て、俺は首を傾げた。嫌な予感?
「俺、リビング行ってモニター確認するよ」
「ああ、ありがとう。大地さんか蓮夜のお母さんじゃなかったら、出なくていいからな」
「うん」
 憩いの場を出てリビングに行って、モニターを確認する。モニターには、鈴香さんが映っていた。母さんでも大地さんでもないけど、鈴香さんなら多分大丈夫だよね? 

「お義父さん、鈴香さんいるよ?」
 紫月さんのそばに行って、俺は言った。

「帰らせろ」
 紫月さんは面倒くさそうに顔を顰めた。

「え、でも、心配してきたんじゃないの?」

「はあ……。入れてやれ」
「うん」
 俺は憩いの場のドアを閉めると、小走りで玄関に行った。俺がドアを開けると、鈴香さんは嬉しそうに笑った。
「蓮夜くん! 元気?」
「それなりに」
 作り笑いをして、俺は言葉を返した。

「店長は?」
「今はご飯を食べています。 どうぞ」
「うん、ありがとう!」
 俺の言葉に元気よく頷いてから、鈴香さんは靴を脱いで、廊下に足を踏み入れた。鈴香さんと一緒に憩いの場にいってドアを開ける。

「店長!」
「げっ。元気そうだな、鈴香。また見舞いか?」
 鈴香さんが声を上げると、紫月さんは面倒くさそうに頭をかいた。
「はい。お見舞いに来ちゃいました。みんな心配していましたよ、店長のこと」
「ああ、そうだよな。悪いな、こんなに休んで」
 紫月さんが申し訳なさそうに下を向く。仕事を休んでいるのに引き目を感じているのだろう。紫月さんは、本当は一週間だけ休むつもりだったのに、怪我が悪化したせいで、仕事にはもう二週間くらい行けていないから。
「いえいえ」

「みんな元気か?」
「はい、元気ですよ。副店長が店長に代わってお店をまわしてくれているので、お店は当分大丈夫だと思います」
「ならよかった。俺が感謝してたってみんなに伝えといて」
「はい、伝えておきます」
 鈴香さんは紫月さんの言葉にしっかりと頷いた。
「ありがとう。鈴香、ごめんな。連夜の家のことも俺の怪我の原因も、他の社員の奴には黙っておいてくれなんてお願いして」
「いえいえ。私は嬉しいので。店長が蓮夜くんのことや怪我の近況を、私にメールで教えてくれるの」

「ゴホッ! お前、よりによって本人の前で言うなよ!」
 紫月さんが勢いよく咳き込んだ。

「本人の前で言わないでいつ言うんですか?」
「お前性格悪いな」
「ええ、そんなことないですよ」