「な、何で! お前はまだガキなんだよ!! 俺は蓮がただ俺と一緒に生きてくれないかと思って。お前が笑って生きてくれるためなら、自分の人生を捨てたっていいって、本気で思っていたのに。……なぁ、蓮、起きろよ。兄の言うことが聞けないのか! ……頼むから、起きてくれよ」

 紫月さんの怒号が、病室に響きわたる。紫月さんは怒っているようにも、悲嘆に暮れているようにも、失望をしているようにも見えた。

 紫月さんの涙で、弟さんの病衣が濡れた。紫月さんは耐えず涙を流していて、その涙は病衣だけでなく、ベッドをも濡らした。

 紫月さんが弟さんの胸を叩いた。

「お前も俺から離れるのか。お前がいなかったら、俺には……」
 紫月さんが泣き腫らした瞳で、俺を見つめる。俺がそばに行くと、紫月さんは突然立ち上がって、俺の肩を掴んだ。

「なあ蓮夜、言ったよな? 家に布団が残っているのを知ったら、あいつは喜ぶって。喜ばないじゃねぇか!!」

 耳元で、そんなことを叫ばれた。八つ当たりにも程がある。でも紫月さんも多分、俺に怒っても仕方がないことはわかっているけれど、誰かに当たらないと壊れてしまいそうだからこんなことをしているのだろう。あるいはもうとっくに、壊れているのかもしれないが。

「死んだからって喜んでないとは限らない」とか、「天国できっと喜んでいるよ」とか、そんな綺麗な言葉だったら、いくらでも言えた。でもそんなことを言ったら紫月さんが余計傷つく気しかしなかった。