僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい


 夜。

 紫月さんと串焼きのお店に行くと、店の前に、母さんと姉ちゃんがいた。何で姉ちゃんがいるんだよ? 俺は急いで紫月さんの背中にくっついて、姉ちゃんに見つからないようにした。

「お母さん、初めまして。紫月義勇です」

「紫月さん、初めまして、蓮夜の母です。息子がいつもお世話になっています」
「ふふ。こんばんは、誘拐犯さん」
 姉ちゃんが紫月さんを見て言う。姉ちゃんの声を聞いただけで、体が縮こまった。

「何でお前がここにいるんだよ!!」
 紫月さんが姉ちゃんを睨みつける。

「すみません紫月さん、出かけようとしているところを、見られてしまって」

「私がいたら困るんですか?」
 困るに決まっている! でもここでそうだと言ったら、『今から虐待の話をする』と言っているようなものだ。紫月さんは俺と同じことを考えたのか、姉ちゃんの言葉に返事をしなかった。

「元気そうね、蓮夜」
 姉ちゃんが紫月さんに近づいて、俺に声をかけてくる。
「ひっ」
 掠れた悲鳴のような声が出た。布地が破けるくらいの力で、紫月さんの服を掴む。声を聞いただけで、身体中が震えた。

「脅かすな。頼むから今日は、蓮夜には手を出さないでくれ」
「もちろんです。ここじゃ、人目もありますから」

 人目がなかったらするのかよ?

「今日は人目のないところには行かないし、もしもお前が蓮夜を人目がないところに連れて行こうとしたら、全力で止めるからな」

「わかってます」
 本当にわかっているのだろうか。

「お母さん、中に入りましょう。ずっとここにいても仕方がないので」
 紫月さんが母さんを見て言う。
「はい。本当にすみません、紫月さん」
「いえ」
 紫月さんに頭を下げてから、母さんは店のドアを開けた。

 店は出入り口のすぐそばにレジがあって、レジの後ろに、椅子やテーブルが並んでいた。


「いらっしゃいませ」
 レジにいる男女の店員が言う。
「何名様ですか?」
 女性の店員がレジから離れて、紫月さんのそばにくる。
「四人です」
 紫月さんが俺の様子を伺いながら言う。

「かしこまりました。席は禁煙と喫煙のどちらにいたしますか?」
「禁煙でお願いします」

 紫月さんは姉ちゃんがきたからイライラしているハズなのに、喫煙にするとは言わなかった。

「かしこまりました。お席にご案内します」

 そう言うと、店員はすぐに俺達を壁際にあるテーブル席まで案内した。

 紫月さんが俺をソファの奥側に座らせて、俺の隣に腰を下ろす。姉ちゃんと母さんが、俺と紫月さんの向かい側にあるソファに腰を下ろす。母さんが俺の目の前に、姉ちゃんが紫月さんの目の前に腰を下ろした。

 姉ちゃんがテーブルに肘をついて俺を見る。俺は姉ちゃんから目を逸らして、紫月さんを見た。紫月さんが机の下で、俺の手を握ってくれた。『大丈夫だ』と、言われている気がした。