家に着くと、ウッドデッキと繋がっている庭に今朝まではなかったものが置かれていた。

「なんだこれ」

思わず呟くと、庭の隅から零士がホースを引っ張ってきた。長いホースに手間取っているようで俺の存在にはまだ気づいていない。

「なにしてんの?」

「わっ……」

俺の顔を見るなり、零士はわかりやすく飛び上がっていた。

あの日以来、零士は俺と目を合わせなくなった。

そもそも口の中を見せろと言い出したのはこいつのほうだ。それで俺は見せた。だからお前も見せろと言った。抵抗なんてするからバランスを崩して、俺は倒れた零士の上に覆い被さった。

あの時の零士の顔が忘れられない。

目をまん丸にさせて、まるで食われる寸前の動物みたいだった。

もしも心臓の速度が数値として表れていたら、多分俺のほうが速かったかもしれない。

零士はただの友達で、それ以上もそれ以下でもなかったのに、いつもとは違う距離と角度で見たあいつは……妙に色っぽかった。

それから俺は零士のことを意識しまくっている。


「つーかこの巨大な竹って、もしかして……」

「和久井さんが流しそうめんサークルの人に貸してもらったんだって」

流しそうめんサークルってなんだよ。BTS同好会もそうだけど、色々と自由すぎるだろ。