「宇津見くん、今は東大生なんだよね?」
「うん。萩本さんは?」
「私は進学しないでアパレル会社に就職したよ。それで今は少しだけ語学の勉強をしてる。海外を飛び回っているバイヤーの人に会って、すごく刺激を受けたんだ。私もいつか買い付けとかをして、自分のお店を開けたらいいなって」
「そうなんだ。素敵な夢だね」
「叶うかはわからないけど、今はやれることを精いっぱいやってるところなんだ。一生懸命やったことは無駄にはならないし、それでダメだったとしても諦めがつくしね」
「うん。叶うように応援してるよ」
「へへ、ありがとう」
背筋が伸びた萩本さんはとても凛としていた。
またいつか会えたらいいねという言葉を交わして、俺たちは手を振り合う。ひとりになって、また少しだけ虚しさが襲ってきた。
――運命の人が匂いでわかる。
ロマンチックで奇跡みたいなことだけど、俺の解釈は少し違う。
運命の人がわかれば、もう間違えることはないし、想いをこじらせることもない。
だから林檎の匂いがした時に、その相手と恋をすればいいと思っている。
普通の恋愛ができない俺にとっては、道しるべとも言えるけれど、自分が傷つきたくないから運命の人を探しているような気がして、やっぱりどっちにしても暗い気持ちになった。



