今日からはじまる恋の話



ある日の休日。俺は新宿のとあるマンションの一室にいた。仕切りがないワンルームに、オフィス用の机と椅子が五つほど並んでいる。

「なあ、零士。ユーザーからアンドロイドの機種だけ通信エラーが出るって問い合わせがきたんだけど、原因がわからないから調べてくれない?」

「うん。わかった。回線の不具合だったら直すのに半日はかかるけど」

「その時は緊急メンテナンスの知らせ出しとくよ」

「了解」

返事をしながら、自分の椅子に腰かけてパソコンを開いた。

俺は大学一年生の時にSNSで(つど)った仲間とスマホアプリの会社を立ち上げた。

iOSとAndroid用のゲームアプリで、ジャンルはRPG。基本プレイは無料だけど、アイテムの課金制があり、そこで運営費などを(まかな)っている。

起業しようと言ったのは俺ではない。プログラミングが得意ということだけで声をかけてもらって、運営チームに入らせてもらってる形だ。

大学在学中に起業する生徒は俺たち以外にもいて、そのほとんとがマークザッカーバーグに憧れている。

一発当てれば大儲け。でも反対に失敗して借金を背負った人も知っている。

その点、俺の仲間は現実主義者が多くて、このゲームだって長く続けることは難しいと考えている人がほとんどだ。

みんなとの話し合いの中で、いずれこの会社は他の企業に売却しようということになっている。

有難いことに複数社から購入の希望を貰っているし、(いさぎよ)く手離すことによって、この起業は成功する。ここで学んだことも多いし、このチームに加わることができて本当に幸運だった。