「ってかなんでそんな目丸くしてんの?」
たしかにいつもより目を見開いてるせいか、鈴村の顔がよく見える。
「鈴村って……なんか香水つけてる?」
「いや、つけてない。匂いが濃いの苦手だし」
「なんか、りん……いや、甘い匂いがする気がして……」
「甘い匂い? 焼肉しか食ってねーけど。あ、そういやレジで飴もらったんだわ。ほら」
鈴村は上着のポケットから飴の包み紙を取り出した。見せてくれたそれにはアップル味と書かれている。
……林檎の飴。なんだ、そっか。匂いは飴だったのか。動揺が酔いとともに消えていく。
「綾子さんと飲んでたんだろ?」
「うん。大通りの側にある焼き鳥屋。安くてうまいんだよ。鶏皮無料券も頻繁にくれるよ」
「マジ? 今度俺も連れてって。鶏皮超好き」
あれから鈴村は俺と普通に接してくれている。
今まで自分のことを打ち明けたことは何度もあった。ひた隠しにしてた時期もあったけれど、それもしんどくなって、関わっていく人には最初から知ってもらうという方法を学んできた。
話したことによって距離を取られたり、下世話な質問をされることもあった。だからある程度のことには馴れているけれど、鈴村の反応は誰とも違った。
俺がゲイであることを欠点だと思ってしまったこと。自分の中に差別的な考えがあったこと。それでも俺に対して偏見を持ちたくないことを、包み隠さずに言ってくれた。そんな人は初めてだ。
「ふっ」
「なに笑ってんだよ?」
「いや、鈴村ならたしかに無人島に放り投げられても草とか食べて生きそうだなって思って」
「なんだそりゃ。草じゃ力が出ないから絶対に肉だろ。まずは猪とかを探すよ、俺は」
「そうだね。狩りの達人になりそう」
「つーかこれなんの話?」
「さあ、なんの話だろ」
逞しさで言ったら鈴村は綾子さん以上かもしれない。
俺はお喋りなほうじゃないのに、なぜか鈴村とは話が途切れない。纏う空気が綾子さんに似てるからだろうか。



