綾子さんと店先で解散したあと、俺は夜風に当たりながら歩いていた。
酒は強いほうだし、綾子さんと飲んでる時も酔い潰れたことはない。だけど今日はいつもより少しだけ酒が回っている。
〝恋愛でしか埋められないことがある〟
綾子さんが言ったことを頭の中で何回も再生していた。
男の人しか好きになれないことを理解してくれる人はたくさんいる。でも利害を共にできる人は限られている。
恋愛はしたいと思う。でも誰でもいいってわけじゃない。ちゃんと心を通わせることができる相手であり、俺と心を通わせてもいいと思ってくれる人。
そんな人、この世界にいるんだろうか。
ふわりと、風にのって林檎の匂いがした。
甘くて、胸が詰まるような香りだ。
ビックリして俺は匂いがするほうを振り返る。
「偶然だな。お前も今帰り?」
スニーカーの音を踏み鳴らしてこっちに歩いてきたのは、鈴村だった。たしか鈴村も今日はフットサルの仲間と飲みに行くって言ってた。



