「桐人君と結婚する気は無いんだろ?それなら良いじゃん、俺で。俺なら家柄も気にせずに一緒に居られる」

突然豹変した諒ちゃんに俯いたまま動けないでいると、諒ちゃんが言った。

確かに各務グループほどの大企業なら気にする必要もない。
必要はないけれど……


「でも……私は……桐人君が……」


バァンッ!


突然扉が勢いよく開く音が聞こえてきて、反射的にそちらへと顔を向けた私は驚いた。


「え、桐人君……?」


そこには桐人君が居たから。
何故か怖い顔を此方に向けて。

するとパッと両手を上げて、私から退いた諒ちゃん。

「ハイハイ、お二人さん、あとは自分んちでやって」

え?何でそうなるの?
諒ちゃんは私を好きなんじゃないの?
それよりもだ、桐人君と今話すのは非常に気まずい。

「帰らないよ!諒ちゃん、泊めてくれるって言ったじゃない!」

私は咄嗟に立ち上がり、諒ちゃんのシャツを掴んで引っ張ると、はぁと溜め息をつき、呆れた顔を作る諒ちゃん。