「生活面での精神的な負担もなし…か」


ヘンリーはまたため息を漏らす。
何事も完璧にそして思い通りに進めたい彼にとって咲良は思い通りにならない厄介な相手だった。


「僕のハニートラップもぜーんぜんダメ。好きにさせるだけさせて思いっきり捨ててやろうと思っているんだけどなかなか上手くいかないの」

「俺は特に何もしていない。人間のご飯を食べているだけだ」


ヘンリーと同じようにため息を付いたのはクラウスだ。逆に全く何も感じていない様子なのがバッカスだった。

彼ら兄弟にはある共通の目的がある。
それは人間である咲良自らがここへの留学を辞めたいとテオに懇願させることだ。

自分たちが辞めさせるのではない。あくまで人間が自ら辞めたいと思わなければならないのだ。

魔王であるテオに人間の身を任された以上表向きは人間を大切に扱わなければならない。
本当は人間などどうでもいい存在だというのに。