そうこう考えている内にいつの間にかバッカスは私のお皿を取り、その中身を全て平らげていた。
バッカスの閉じられた口の中から、バキバキと音が鳴るたびに鳥肌が立つ。

いくら食べることが好きだからってあんなものまで平らげるとは恐ろしすぎる。


「咲良はここに来てからずっと体調が悪いな。しっかり休めているか?」


バッカスの食べっぷりをげっそりしながら見ていると、今度は品があるが意地の悪い笑みを浮かべている長男ヘンリーに声をかけられた。

はい、今晩も始まりますよー。ヘンリーと腹の探り合いタイム。


「ええ、まあ。慣れない環境なのが大きいのかな…」

「そうか。俺はテオに咲良を任されている。何かあればいつでも言ってくれ」

「…ありがとう。とりあえず日本料理が食べたい…です」

「ああ。料理長にそう伝えておこう」


笑顔のヘンリーに私もいつものように笑顔で返す。
ヘンリーの思ってもいない言葉に私はすぐにでも反論したかったがそれをまたぐっと堪えた。