「あー。いやちょっとね」
過去のアナタの悪行の数々を思い出していました、と言うつもりはない。
「ふーん」
クラウスは私の曖昧な返事に不満そうにしていたがそれ以上聞こうとはしてこなかった。
さすがクラウス。
私が嫌がることは絶対にしないんだよね。
「寂しくなるなぁ」
ふと、クラウスがしみじみとそう言った。
「…僕、咲良が本当に好きなんだよ。前にも言ったと思うけど僕の全部をあげてもいいくらい」
「うん」
寂しそうに笑うクラウスの言葉にはきっと嘘はないのだろう。
あの軽薄だったクラウスが大真面目にこんなことを私に言うようになるなんて最初の頃の私なら想像さえもできなかったはずだ。



