***** 「…」 ゆっくりと瞼を開ける。 そこは先程の色のない街ではなく、何度か訪れたことのある魔王城の謁見の間だった。 そして私の目の前には魔王であるテオが私の手を握りしめて立っていた。 ここにはヘンリーたち5兄弟たちの姿はない。 「…帰って来たの?」 私は考えていることをポツリと口にした。 「そうだよ。とりあえず魔界にだけど」 「…」 私の声を聞いて答えるテオにはもうあの仄暗い雰囲気はない。 今私の目の前にいるのはいつもの優しくて愛らしい私が大好きなテオだった。