「桐堂 咲良」
訳がわからないまま立ち尽くしていると王座のような場所に座っている〝誰か〟が私の名前を冷たく呼ぶ。
桐堂 咲良ートウドウ サクラー、それは私の名前だ。
実家がまあまあ大きくて有名な神社である以外はおそらくごくごく普通の女である私の。
「…あ、はい。そうですが。あのここ私の家ですよね?」
この訳のわからない状況を聞ける相手があそこに座っている〝誰か〟しかおらず戸惑いながらとりあえず聞いてみる。
「ここはお前の家ではない」
すると〝誰か〟は淡々とした声でそう答えた。
はい?
なんだって?
いや、確かに私の家はこんな部屋じゃないけど。
つまり何度も確認したがやっぱり帰る家を間違えたということか。
疲れとは恐ろしい。
過労死なんて笑えない。