ここへ来て半年以上経つが、毎日女遊びで忙しそうなクラウスは偶然会わない限り、私と積極的に関わろうとはしない。
もちろん私の小屋にだって一度も来たことはない。

そんなある意味毎日忙しいクラウスが自ら私の小屋へ足を運ぶ訳がない。
エドガーかバッカスならまだしもあの遊び人クラウスだぞ?

こんなあり得ない幻覚を見るだなんて相当疲れているに違いない。


「…咲良?何惚けているの?僕の魅力にやられちゃった?」

「…」


いや、クラウス本人だわ。

ふわりと笑い、ふざけたことを言うクラウスを見て私は確信した。

目の前にいるのは幻覚ではなくクラウスだと。
しかもよく見るとこの部屋にいるのはクラウスだけのようだった。
エドガーの姿もバッカスの姿も見当たらない。