…あまりいい気分ではない。


「ヘンリーは帰りたい?」


気を取り直してヘンリーへ私は問う。

ここは欲望の世界だ。
最初こそ帰りたいと願っていた私でさえ飲み込まれた。

ヘンリーも私と同じだったが今はどうなのだろうか。


「読みたいものは全て読み終えたし、俺がいないことによって、テオ…いや魔王様にこれ以上の迷惑はかけられない。だからもう帰らないとな」


ヘンリーの答えに不安もあったが、その必要はなかったようだ。

ヘンリーは不敵に私にそう言って笑った。