鏡に映る私を改めて見つめる。

昨日出会った魔王やヘンリーのように真っ赤ではなく日本人らしい真っ黒な見慣れた瞳がこちらを休んだにも関わらず疲れた目で見つめている。

胸まである栗色の直毛は癖ひとつなく正直時間のない朝には助かる髪質だ。
直毛すぎて巻き髪とかはあまり楽しめないが。
もちろん地毛は黒だ。染めている。


「…はぁ」


今日の化粧のできに思わず朝からため息が溢れる。
もっと大人っぽい化粧が好きなのだが、今手元にあるものではこのくらいの化粧しかできない。
化粧により完成した顔は少しだけ背伸びをした幼さの残る女の顔だった。


私の持ち物はカバンの中にあったものが全てだった。基礎化粧品とスマホとスマホの充電器と財布。後は仕事に必要なものとかお父さんに無理矢理持たされている塩とか。

こんなことになるならもっとちゃんとしたものを持っていたのに。