「…すみません、魔王様」

「ん?どうした?」


少しくらい文句を言ってやろう。
そう思った私はヘンリーと話をしていた魔王を呼ぶ。


「確かに兄弟の皆さんはよくしてくれます。ですが兄弟の皆さん以外はそうではありません」


私が静かな声でそう言うと魔王とヘンリーのにこやかな空気が変わった。

魔王からもヘンリーからも笑顔が消えた。


「学院ではいじめのようなものに遭っています。ここでの料理は料理長が気を利かせて人間界の様々な料理を出してくださいますが、先日は人間には猛毒のスパイが入っていたせいで酷い目に遭いました。正直兄弟たちがいなければ怖くて1人で生活ができないのが現状です」


しおらしく眉をひそめて私はそう言った。

少々しか嘘はついていない。ほぼ何も知らないフリをした私からの意見だ。