レイチェルお嬢さまは、計量経済学の本を読んでいます。

トマトハウスに初夏の陽光が差し込むようでした。

あたしはメイドのセブンです。

「経済学だと、

Y=C+I
C=40+0.75Y、

つまり

Y=C+I
C=α+βY

といった、
よくあるマクロ経済モデルを使うわね」

「左様ですか」

「GはGDP、Cは消費、Iは民間と政府の投資ね。
β(ベータ)は収入つまりGDPに対する消費性向ね。」

「なるほど。
消費性向は、どれだけお金を使うか、ですね。
あと式変形できますね?」

「そう。たとえば投資Iの増加がどれだけGDPを増やすのか、つまり投資乗数が比較的簡単に解けるわね」
「左様ですか。
投資乗数ですが、たとえば投資乗数は実体経済の何で決まるのでしょうか?」

「ここは実際の実体経済のデータ、たとえば消費性向を調べるわね」

レイチェルお嬢さまはそう仰りました。

あたしは野良猫を保護していたときのことを思い出します。野良猫への投資Iは消費性向βを左右したパラメーターのはずです。そして消費性向は投資乗数のスコアを決定し、GDPを増加させる···