【内なる世界に火を灯して】

あたしはセブン。レイチェルお嬢さまの従僕。

寝室で過去の映画を観ています。ウニヴェルズム社の。

夏の陽射しが差し込みます。

ギボンのローマ帝国衰亡史を読んでいます。黄昏の時間。昼間は過ぎ去り、夜の眠りに入る前の空想と(うつつ)の境い目。

空想と現の境い目にはあらゆるものが潜んでいます。あたしは坂を徒歩で下りている老婦人でしたし、宇宙船(スターダスト)に乗り込むアメリカ人のパイロットでした。

ケーキを食べました。蜂蜜とバターでつくられた黄金のフォルム。セル形成フォルム。

人類は黄昏の時代を迎えるのでしょうか。

あるいは過去の黄金をあたしは探しているのかもしれません。沈潜し過去の時代に潜り込む潜水艇のようにして。

我々は空想の世界に火を灯さねばなりません。空想世界に火が灯らなければ誰ひとり、内なる世界に潜り込めないのではないでしょうか。