【レイチェルとあたし】

あたしはセブンです。
英国のトマトハウスのメイド。

家事や洗濯をしています。
レイチェルさまは音楽を聴いています。

図書室に並立する視聴覚室で。ミサ曲が流れています。

音楽についてあたしが知っているのはごくささやかな知識や経験に過ぎません。
それはミサ曲だったり、ポップスだったりします。

そういえば、ラジオでヘンデルのミサ曲を聴いたときに感興にふけったこともありました。音楽は単なる音の集まりではなく、音楽を人間らしくしているものもあるはずです。

すこしノートを書く手を止めて振り返ってみます。
音楽からあたしはどのようなものを賜ったか?

フランスの治癒儀礼の伝承を思い出します。フランスでは、13世紀から18世紀のあいだ、フランス王による、王の触り、ロイヤルタッチによる治療儀礼がありました。
しかし、手当てという言葉は今もありますし、そういった聖心治癒の考え方があながち間違いとは言い切れません。ロイヤルタッチを信頼していた、という人々がいるのは事実なのですから。