宵くんの服の裾を握りしめ、宵くんからのキスに必死で応える。
宵くんはずるい。
いつだってわたしより何枚も上手。
余裕そうなとこも、わたしをからかって遊ぶところも、キスがとびきり上手いところも、全部全部、好きでたまんない。
「っ、はぁ」
力が抜けたように宵くんの肩に頭を預けると、背中に回った大きな手がトントン…と優しく叩いた。
今日もヨユーそう。
ムカつくけど、勝てっこないのも分かってるからもう対抗したりもしない。
「仁乃、キス上手くなった?」
「えぇ……そうかなぁ……」
だとしたら宵くんに仕込まれたせい。そう言えば、「かも」と笑われた。
ドスッと心臓一刺し。
宵くん、そろそろ自分の尊さを自覚してくれないか。



