長年そばに居るけれど、彼女に可愛いと言ったことは一度もない。
……だって。
1度言ってしまったら、
「もっとキレイになって、紘ちゃんに可愛いって思われるように頑張る、から」
おれのために頑張る仁菜子が居なくなってしまうような気がするから。
「……それ毎日言ってて飽きねーの」
「飽きないよ…!紘ちゃんに可愛いって思われたくて頑張ってるんだもん…!」
可愛くない。可愛くなくていい。だからもっとおれのため"だけ"に可愛くなっていけばいい。
「あのね、毎日言ってるけど仁菜子ちゃん充分かわいいからね。こいつの天邪鬼に付き合わなくていいからね?」
「…あ、あのね、木暮くんから可愛いって言われてもね、全然嬉しくないの」
「うわぁ紘のせいで俺が傷ついたんだが〜〜意味わかんねえ〜~」
「うざい木暮」
ぜったいぜったい、仁菜子は可愛くない。