「動いてるだけで今日もかわいいよなぁ」
「うっせぇお前は褒めんな。あと全然かわいくない」
「いや可愛いだろ。どこをどう見てもかわいいでしかないよ」
「……あぁ?眼科行けば」
「紘がいちばん重症患者だけど大丈夫そ?」
木暮は今日も絶好調でうざい。おれはなんでこんなやつと長年友達をやってるんだろう。
なんとなく楽だからだっけ。……あと、あいつに下心を持たないレアな人間だから、だったような気がする。
「仁菜子ちゃーん」
は、と声を洩らした時には遅かった。木暮に気付いた彼女が控えめに手を振って、それからこちらに向かって歩いてくる。
「、おい、何呼んでんだバカ」
「紘がかわいいから?」
「おれは可愛くねえしあいつも可愛くねえしお前はうぜーよ木暮 卵焼き喉に詰まって今すぐここで死ね」
「おーおーよく喋るね紘!いいぞその調子!」
ぜったいこいつあとでぶん殴る。そう心に決めて、近づく足音に神経を注ぐ。
あと8歩、5歩、……1歩。
「紘ちゃんっ」
────…来た、おれのとこ。



