「仁菜子ちゃん、今日もモテモテだねー」
「どうでもいい」
「どうでもいいは嘘すぎる。現にコーヒー牛乳様がおまえの餌食になった」
「うぜぇ木暮、だまれ」
「えーん紘くんがこわいよぉぷんぷん」
口元に手を当ててそう言う木暮に「キモイ」と一言返して、手元にあるぐしゃぐしゃになった紙パックを見つめる。潰した時に飛び出た中身のせいですこしだけ手がベタついている。
そう言えば別にコーヒー牛乳が飲みたかったわけじゃなかったな、おれ。なんで買ったんだっけ。
昼休みになって、食堂の自販機に向かったら……あぁ、あいつが飲んでたからか。
コーヒー牛乳にたどり着いた理由を思い出して、自分にすこしだけ引いた。
「あ、仁菜子ちゃん戻ってきた」
ピクリ。 木暮の声に肩が揺れたのは、条件反射みたいなものだと思う。
「紘、ほんとおもしろい」という馬鹿にしたような木暮の声は、聞こえなかったことにした。



