​───ぐしゃり、



「うわ!何してんだよ(ひろ)

「あー…」

「あー、じゃなくて!溢れてる!コーヒー牛乳様が溢れていらっしゃる!」

「…うっせぇ、んな大袈裟に言うな」




おれの右手を伝うコーヒー牛乳を、友人の木暮(こぐれ)が慌ててハンカチで拭いている。

こいつ、いつも若干オーバーリアクションなんだよなぁ。コーヒー牛乳の紙パックを ちょっと力んで潰してしまっただけなのに。




「なーにイラついてんの」

「むかつく害虫の声が聞こえた」

「コーヒー牛乳様も飛んだとばっちりだな」

「知るか」




「ハンカチが茶色くなっちゃったわ」なんて言いながら、木暮が呆れてため息をついている。

花柄のそのハンカチ、ぜったい妹のやつだろ……と思いながら、おれもまたため息をついた。


むかつく害虫の声が聞こえなかったら、コーヒー牛乳だってこんな目にあうことは無かったけどな。

チッ、と小さく舌打ちをして、声がした方に視線を移す。