「紘ちゃん、コーヒー牛乳好きだよね…!本当はお昼休みのうちに渡そうと思ってたんだけど、ゆみちゃんとお話してたら盛り上がっちゃって、予鈴ギリギリになっちゃったから渡せなかったの…、ごめんね」



渡されたのは、おれが昼間に握り潰したものと同じコーヒー牛乳だった。


何度か仁菜子が自販機でコーヒー牛乳を買っているのをたまたま見かけたことがあって、(あいつコーヒー牛乳好きなんだ、あっそ)と思いながら、気づいたらおれも買うようになってただけ。




今日もそうだった。

べつに好きなわけじゃない。そう、べつに。

……でも、まあ、




「おれのために取っといたの、これ」

「…、う、うん」

「…さんきゅ」


おれのためにっていうなら、貰ってあげなくもない。


仁菜子からそれを受け取りお礼を言うと、彼女はポッと顔を赤らめて微笑んだ。



「紘ちゃん、またあしたね…!」

「おー」



今日のコーヒー牛乳は クラスの害虫たちの会話のせいで半分以上ティッシュに吸い込まれてしまったから、家に帰って大事に飲もう。



…………なんて、そんなことを思ったのは 仁菜子にはぜったい言わない。