煙くんと過ごす夜は楽しかった。
友達や家族への不満や愚痴、世界の不条理。
そんなことばっかり話していたけれど、いつもより格段と夜が過ぎるのが早かった。煙くんは話を聞くのが上手いと思う。
適当に聞いているように見せかけて、実は結構興味を持ってくれている。はじめましての人なのに、まるでずっと昔から一緒にいたような、そんな感覚にさえなった。
「不良JK」
煙くんがわたしを呼ぶ。
名前っていうより名称だけど、その響きは、本名よりもずっと心地よく感じた。
「一人がこわいのはあんたのほうじゃねーの。おれは別に、怖いってより1人で家にいるのがきらいなだけで」
「ご最もです」
「な。人のせいにすんなよJK」
そう言って、煙くんはおもむろに立ち上がった。
帰るのかもしれない。わたしもそろそろ家に帰らないといけないかなと思いながらも、煙くんともう少し一緒にいたいという気持ちも顔を出す。
今一人になったら、煙くんと過ごした夜が恋しくなって忘れられなくなりそうだと、そんな変なことを考えてしまう。



