素面状態ではあったものの、深夜だからこそ、数秒前に初めて会った人間に声をかけるなんてことが出来たんだと思う。
深夜に徘徊する癖がついている時点で、わたしは正気ではなかった。
不良JKと名乗るわたしの瞳を真っ直ぐ捉えた煙くんが、フー…と白い煙を吐いて、それから煙草を足で踏み潰す。煙草の火が消えただけで辺りは一気に暗くなった。
『おれは、副流煙』
『……はい?』
『おれの名前、副流煙。あんたと同じで、おれも眠れないから散歩にきた』
『副流煙、』
『おれ、悪影響の塊だけどな。それでもいいなら、話し相手くらいにはなるんじゃね』
副流煙くん。
長いから、煙くんと呼ぶことにした。
それが、わたしと煙くんが出会った─────数時間前のこと。



