「声帯結節です。おそらく原因は声の使いすぎ。声がほぼ出ておらず、かなり症状が進んでいます。声優をやっているんでしたら手術の方がよろしいかと。ですが、再発の危険もありますし、おそらくは……」

やめて。その先は、言わないで………。

「───もう、声優への復帰はほぼ不可能かと」

その言葉を聞いた瞬間、私の目からはとめどなく涙が溢れた。

初めての仕事に緊張した日も、上手く声が出せなくて注意された日も、先輩と連絡先を交換した日も、主人公に抜擢された日も、大好きな人──裕翔くんと付き合うことになった日も。

全部、私の声優人生の、大切な思い出なのに…。


その後のことはよく覚えてない。

ただ、これだけは確かに分かった。

中学2年生の冬、私は──MiAは、希望と声を失った、っていう、残酷な真実だけは。