「寂しい。お父さん寂しいぞ。せっかく会えたのに、また会えなくなるなんて」


「大丈夫だよ、お父さん。永遠に会えなくなるわけじゃないんだよ?夏休みとかには帰ってくるから」


「ほんと?お姉ちゃん」


「うん、本当だよ」


にっこりと笑って、亜妃の頭を優しく撫でた。


「もう、あなた。あなたがそんな顔してどうするんですか」


「しょうがないだろう」


「そんなこと言っちゃダメでしょう。由妃が決めたんです。私達が笑って送り出さなきゃ意味がないでしょう?」


「うっ。まぁ、そうだな」


ほっこりするような会話。


お母さんとお父さんの仲の良さが伝わってくる。


「明日からだから、今日は1日いるよ。亜妃、一緒に遊ぼう?」


「いいの?やった!」


今日1日、家で楽しく過ごした。


亜妃と遊んだり、留学中のことを話したり、家族皆で団欒したり、テレビを見たり。


あっという間に寝る時間になって、ベッドにゴロリ。


明日からは他のベッドで寝ることになるから、今日で終わりだ。


久しぶりなのに、1日だけなんて。


ベッドに寝転んでいたけど、不思議と目が覚めてしまう。


うーん、困ったな……あ、そうだ!


真帆に電話しよう。


高橋真帆(たかはしまほ)は私の親友で、よき理解者。


本当はもう1人親友がいるんだけど、今はきっと違うところにいるから。
 

真帆には伝えておきたい。


聖君に伝えないってどういうことなんだって話だけど……


電話帳の中から高橋真帆を探して電話をかけると、わずか1コールで出た。


「もしもし、真帆?」


『もしもし。あなた、もしかして由妃?』


「うん、そうだよ。電話に出る時、名前見なかったの?」


『違うわよ。ただ信じられなくて』


留学してる間、1回も真帆達に連絡しなかった。


連絡してしまったら、逢いたくなってしまうから。


こうやって、電話をかけるのも久しぶりつてことになるよね。