っ、生クリーム食べ過ぎたかな。
それとも凄く甘い物だったから?
気持ち悪い…吐き気が…。
「あ、あの…お客様…?」
視線は更に私達の方に集まり、戻って来た店長さんも目を真ん丸としていた。
「大丈夫です」そう言いたかった。
だけど口を抑えるので手一杯。
……紘が上手く言ってくれる…はず。多分…きっと。
紘は大きく溜息を吐いた。
咄嗟に悟る。
…これは上手く言ってくれないと。
「なに見て……、」
「…もう出よう…?」
汚い言葉が出てしまう前に、服を引っ張った。
今できる精一杯の笑顔を紘に向けて。
「紘と二人になれる所行きたい…」
今の紘は凄く不機嫌だから。
ずーっと苛々してた紘の相手を出来るのは多分私ぐらいじゃないかな…下手に刺激してまた「眼鏡取る」とか言われたら困っちゃうしね。
眼鏡が鬱陶しくなって外しても誰にもバレない為にも、ね。
「……ま、あ…そうだな。紬が俺と居たいつーなら…仕方ねぇな」
ちょっぴりご機嫌になった紘は私から顔を逸らした。
「騒がしくして悪かったな」
そう言ってポケットからお金を取り出し、テーブルの上に置いた。
見るからに分かるザ・札束に店長さんはさっきよりも大きく目を見開く。
「詫びだと思ってくれ。それから…悪いがこのケーキとスプーンは貰ってく」
紘はそう言って私を抱えたままお店を後にした。


